日本の”ホテル隔離”を振り返る~JICA海外協力隊の「近くて遠い共同生活」

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こんにちは。Gakujinと申します。

先日、JICA海外協力隊として
ベトナム・ハノイに来ました。

ホテルの部屋から一歩も出られない、
入国から2週間の隔離中
この記事を書いています。

 

そんな私、実は日本でも
「2週間の隔離」を経験しています。

 

それはJICA海外協力隊・2021年度1次隊
訓練所入所前に行われた、

「リモート型訓練 兼 健康観察」です。

 

日本入国時に課される
「待機(自主隔離)」とは異なり、
外出も認められた”緩やかな隔離”でした。

 

 

今後、同様の経験をする方の
参考になればということで、

今回は「日本のホテル隔離」の思い出を、
シェアしたいと思います!

 

 平和とは何か

2週間の隔離生活をしたのは2021年4月
滞在先は皇居に程近い都内のホテルです。

二本松訓練所に入る候補生は都内のホテル、
駒ヶ根訓練所に入る候補生は長野県内のホテルでした

 

 

部屋は広くてとても快適。

写真撮ってなかった・・・


眼下に横たわる首都高の喧噪が、
静かな隔離生活と対照的です。

 

「リモート型訓練」とあって、
毎日各種オリエンテーションが
オンラインで行われますが、
その他はほぼ自習時間

 

大都会の景色を眺めながら、
ベトナム語の勉強に励みました。

 

 

おや、窓の向こうに
顔を寄せ合うが。

 

この写真、よく見ると
鳩に囲まれたすき間が
ハートの形になっています。

仲睦まじい平和の象徴
我々の前途を祝してくれています。

 

後ろの看板では古田敦也さんが
ガッツポーズでエール。

 

良いことありそうな予感がします。

 

ベトナム語は発音が難しいため、
自習ではなかなか体得できません。

 

なので、

 
隔離期間はまず書く練習に専念し、

その後、訓練所で会話練習をたっぷり・・・

 

 

 

 

おい、そこ!

なにやってんだ!

 

 

 

・・・まったく、

 

 

皇居前だぞ。

 

何と不敬な。

 

 

こっちは隔離部屋で
1人悶々と勉強してるというのに
そんな堂々と・・・

 

 

おい!聞いてんのか!

絶妙に見切れた古田さんの身にもなれ!

 

 

コンコン!(窓ノック)

バサバサバサバサ(飛翔)

 

 

・・・はぁ、もぅ、

 

すみません。

とり乱しました。

 

鳩だけに。

 

 

  

 20秒のマスカレード

隔離中は同期の仲間約60人
一つ屋根の下ですが、

当然、それぞれが部屋にこもる日々。

「近くて遠い共同生活」でした。

 

2日目には同期全員が
オンラインで自己紹介をし合うも
きまぐれなWi-Fiにもてあそばれ…

 

はじめまして。

ベトナ・・・    ぇん予定の

がっ・・・    と申します。

 

みたいな穴埋め問題が続出。

 

難問。

 

 

そんな仲間に唯一直接会えるのは、
1日3回のお食事タイムでした。

 

写真提供:かこさん(ケニア)

 

部屋で食べるお弁当スタイルとはいえ、
「さすがはホテルごはん!」と
舌を打つ美味さです。

 

食事の時間になると、
お弁当を配るホテル内の会場に
みんなが向かう
のですが、

 

各階に点在する仲間が、
エレベーターで鉢合う
まさにその瞬間

 

 

弾丸トークセッション
幕を開けます。

 

 

 

ピンポーン(エレベーターが開く)

 

同期「おつかれさまでーす」

「おつかれさまですー」

 

「勉強、はかどってます?」

「いや全然ですよー」

「ねー、1人はしんどいですよねー」

 

「出身どこでしたっけ?」

「わたし〇〇です。」

「あー良いとこ!」

「来たことあります?」

「ありますよ、おととし出張であそこの

ピンポーン(会場到着)

 

 

「・・・えーっと、へへへ、先どうぞ」

「あ、すいません、えへへ」

 

 

 

難っ!

 

 

時間にして、約20秒。

話したい気持ちに任せて
なんとなくセッションを始めると、

このような空中分解が待っています。

 

 

そしてお互い、
情報が少ない中の探り合い。

 

名前、何さんだっけ・・・
派遣国どこの人だっけ・・・

 

そんな基本情報の確認に時間を割くのが
あまりに惜しまれる、20秒。

 

 

 

1対1でトークできるのは
まだ良い方でして。

 

これが4~5人ともなると、

話の着地点という概念が崩壊します。

 

 

 

ピンポーン

 

「おつかれさまでーす」×4

 

「・・・。」

「・・・。」

 

「あっ!」

みんな「ん?」

 

 

「全員、派遣先アジアだ」

「・・・ほんとだー」

「おぉー」

ピンポーン

 

 

 

 

私も長年テレビ業界で
時間と向き合う仕事を
してきましたが、

 

これほど宇宙をさまよったのは
初めての経験でした。

上記の例は投げる球が悪いだけですね。派遣先アジアだ、て。 

 

 

 

しかもですよ。

徹底したコロナ対策の下では

当然、みんな小声でマスク姿

 

感覚を研ぎ澄まし、
マスクの向こうを探り合う
エレベーターの20秒間は、

 

まさに

仮面舞踏会でした。

 

 

 密室ファシリテーター

しかし、さすがは
海外協力隊の候補生。

 

仲間たちはこの異次元の舞踏会に、
ものの数日で順応し始めます

 

 

 

ピンポーン

 

「あー〇〇さんおつかれさまです」

「〇〇さんおつかれさまでーす」

 

「きのう何時くらいまで
 起きてまし・・・た?(全員に視線)」

 

「11時ごろです」
「1時ですね」
「私も11時」

 

「1時遅っ!何してたんですか?」

「いや友達とLINEしてたらずるずる・・・」

「へーちょっとみんなLINE交換しましょ」

全員「しましょしましょ」

ピンポーン

⇒帰りのエレベーターを待つ間にLINE交換

 

 

おわかりいただけたでしょうか。

 

あいさつに名前を添えることで
全員に基本情報を共有し、

おのずと決まった
ファシリテーター(進行役)が
全員に関わる質問を瞬時に投げ、

そこでピックアップした答えから
交流深化の糸口をつかむ。

 

 

進行役の妙技もさることながら、

何よりそこにいる全員
到着階までの時間を逆算しつつ
ゴールを共有しているからこそ、

 

この即興フラッシュモブ
完成するのです。

  

仲間の進化に畏敬の念を抱きつつ、
そこに身を置く幸せに、心が躍りました。

 

 

 

そんな仲間と交流できる場は、
仮面舞踏会だけではありません。

 

 

各部屋をつなぐオンライン座談会
連日開かれました。 

 

画像は一部加工しています

 

ウガンダ隊員のミゲルさんが契約していた
Zoom有料プランのおかげで実現しました。
ありがとう!

 

派遣国別の情報交換から
修学旅行の消灯後みたいな話まで
テーマは様々でしたが、

やがて各隊員が自分の強みをシェアする
「自主講座」が開かれるようになりました。

 

画像は一部加工しています

こうだいさん(東ティモール)による
「少林ジャー(少林寺拳法)入門」

に始まり、

 

・「記憶について」
・「上手な教え方講座」
「失恋講座」(!!)

など、多種多様。

 

 

私も「かんたんメディア活用法」
登壇しました。

画像提供:まなさん(ウガンダ)

 

オンラインでのプレゼンや会議は
まだまだ不慣れだったので、
こうした機会を得られたのは
とてもラッキーでした。

 

 

 メロンのにおい

前述の通り、私が日本で経験したのは

「緩やかな隔離」なので、

軽い運動や買い物など、
必要最小限の単独外出は許されました。

 

 

私は時々、近所のスーパーで
大好きなフルーツを購入。

 

往復一キロの買い物タイムは
密室暮らしに潤いを与えてくれる
ささやかな旅でした。

 

 

みなさまー、右手に見えますのはー
ベトナム産ドラゴンフルーツでございます。

日本が輸入を認めてまだ10年あまり。

(※白肉種は2009年~、赤肉種は2017年~)

パリピな外見とはうらはらな、
すっきりした甘さが魅力の
ニューフェイスでございます。

 

そのドラゴンフルーツが
肩を寄せておりますのは、
熊本産の青肉メロンでございます。

熟れすぎて半額で売られておりましたが、
今がまさに食べ頃とわたくしが
秒でかごに入れたものでございます。

 

 

 

で、買ったは良いのですが、

自分でも信じられないことに、

 

部屋に戻るまで

どうやって食べるか
ノープランでした。

 

 

メロンを片手に、思案タイム。

 

 

龍の果物は素手でいけまつるが、
この
望月をや、いかがはせむ。

すゑひろがりず風に

 

 

包丁がなければ、
力づくで食べればいいじゃない

~マリーアントワネット~

 

そんな言葉もよぎりましたが、
幸い私のスーツケースには

文明の利器が入っていました。

 

 

ドライバーと言う道具です。

 

 

赤道のような中央ラインを引き、

それに添ってぐさぐさやるのです。

 

 

芳醇な果汁をまき散らしながら

メスを入れ続けること、3分。

 

 

 

手術は無事成功しました。

 

 

ちなみにスプーンも持ってませんでした。

なんとかなります。

 

 

 

口いっぱいに、いや、

部屋いっぱいに広がる

メロンの香りを楽しみながら

ふと思いました。

 

 

これも訓練なのだ、と。

 

 

 

海外での活動は、
あらゆる制限を強いられるのが常。

 

エレベーターのフラッシュモブも、
メロンの開頭手術も、

 

限られた手段の中で
課題をどう乗り越えるか、

 
その訓練にすぎないのだ、と。

 

 

そう考えると、

密室で過ごす1日1日が
かけがえのないものに感じました。

 

 

部屋に残り離れない
甘いMelonのにおい~


を、懸命の水拭きで仕留め、

 

14日間の隔離生活、もとい
「リモート型訓練」を締めくくりました。

 

 

 

 

 

読んでいただきありがとうございます!

 

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