ベトナムから見たロシアとウクライナ~人ごとではない「戦争と平和」を考える

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立場上、

発信は控えるべき事柄とも

思いましたが、

 

発信を控える事が不自然だと

思いましたので、

 

各種ルールを踏まえた上で、

感じたことをつづります。

以下文面は個人の見解であり、

所属先の見解を代弁するものではありません。

 

 

物言わぬ強さ

2022年2月24日。

ロシアがウクライナに侵攻。

 

私がボランティアとして所属する

国営テレビ局・ベトナムテレビも、

もちろんニュースで報じました。

 

 

ただ、報じる内容は

現地の客観的な情勢と、

ウクライナにいるベトナム人の

安否情報などが主。

 

ロシアの侵攻を

直に批判することはありません。

 

それはベトナムの国営テレビ局として

ある種、自然なことです。

 

なぜなら、ベトナム政府が

批判的見解を示していないからです。

「武力行使せず、平和的な解決を」という報道官コメントは

侵攻後、ベトナム外務省記者会見で発表されています。

この情報は@thanhnhat_1969さんに教えて頂きました。

ありがとうございます。

 

日本のメディアなら

政府におもねる必要はありませんが、

ベトナムではそうはいきません。

 

 

ベトナムでも

言論の自由・報道の自由は

憲法で保障されていますが、

 

その自由を利用して

国家に不利益をもたらすことは、

「罪」になります。

 

 

 ベトナム社会主義共和国憲法(2013年法) 第25条

 市民は、言論の自由、報道の自由、情報へのアクセス、
 集会、結社、デモの権利を有する。
 これらの権利の実現は法令が規定するところによる。

  

 ベトナム刑法(2015年法) 第 331 条1項

 言論の自由、報道の自由、(中略) その他の民主的自由の権利を利用して
 国の利益、組織、個人の法的な権利・利益を侵害した者は、
 戒告、3 年以下の非拘束矯正又は6 か月以上 3 年以下の懲役に処す。

 

 引用元:JICAホームページ

 https://www.jica.go.jp/project/vietnam/021/legal/ku57pq00001j1wzj-att/legal_03_20151215.pdf

 https://www.jica.go.jp/project/vietnam/021/legal/ku57pq00001j1wzj-att/legal_100_2015_QH13.pdf

 

 

まして今回は

国家の安全保障にも関わる重大案件。

 

国営テレビ局として

うかつな発言はできないのです。

 

 

当然個人であっても

ベトナムで活動する以上、

法は遵守せねばなりません。

 

情報を届ける者としては

ある意味、腕の見せ所です。

 

 

実は、

私と同じフロアで働く同僚の中に

渦中の両国に縁を持つ

女性リポーターがいます。

 

やはり彼女も多くは語りませんが、

侵攻直後、SNSで一言。

 

 

「私はウクライナの

 クリミアで生まれました。」

 

クリミアは2014年に

ロシアが併合を宣言した、

ウクライナにある地域。

 

無機質な一文の威力が、

強烈でした。

 

 

物言わぬ理由

なぜベトナムは

物言わぬスタンスなのか。

 

この国ならではの理由が

一つ思いあたります。

  

それは、

ロシアもウクライナも、

「旧ソ連」だから。

 

  

Photo by The New York Public Library

 

1955年に始まったベトナム戦争は

縦に長いベトナムを二分する

「北」と「南」の争いでした。

 

この時、

「北」を支援したのがソ連、

「南」を支援したのがアメリカです。

 

激しい戦いの末、

社会主義国・ソ連に支えられた

「北」が勝利。

 

南北統一を果たしたベトナムは、

「ベトナム社会主義共和国」

となり、今に至ります。

 

その後ソ連は崩壊しますが、

独立したロシアとウクライナは

いずれもベトナムと

強い友好関係を築いています。

 

自国のアイデンティティにも関わる

両国の争いに、物言いはしづらい。

 

そういう空気を、

私は感じています。 

 

 

秘めたる思い

ではベトナム国民は

この戦争に関心がないのかというと、

決してそんなことはありません。

 

 

Googleトレンド検索画面 2022/02/20-28

 

検索ワードの流行を調べられる

Googleトレンドを使って

ベトナム国内の直近の傾向を

チェックすると、

 

今回の戦争に関連する項目が

上位を占めていることがわかります。

※「トピック」は日本語訳された内容です

 

日本にもましてサッカー熱がすごい

ベトナムは2月27日、

東南アジアU23選手権という大会で

優勝して国が沸いたのですが、

その話題をも上回る関心度です。

27日に限定するとおそらくサッカーの方が上なのですが、

検索対象期間が最短でも8日間必要なのでこうなります。

 

表だって口にはせずとも、

ベトナムの人々はしっかりと

この戦争の行方を

注視しています。

 

 

ベトナムから見えるもの

会社の同僚ではない

ベトナム人の友人(30代)が、

ふと漏らした言葉が

心に刺さりました。

 

 

「ウクライナで起きている戦争は

 ベトナム戦争と同じだ」

 

彼の言葉の真意を酌み取るのに、

時間はかかりませんでした。

 

 

クリミアの観光名所「ラストチキノグネスド」
Photo by Irina Kushnikova

 

ウクライナでは以前から

親ロシア派と親欧米派による

紛争が続いていました。

 

さらに、今回ロシアが

ウクライナに侵攻したのは、

 

「ウクライナがNATOに入ろうとし、

ロシアの平和が脅かされたから」

というのが大義名分です。

 

そのウクライナのNATO入りを

裏で(ほぼ表で)手を引いたのが、

アメリカです。

 

今回の戦争の背景にあるのは、

アメリカとロシアの覇権争い。

 

その構図は、

朝鮮半島やベトナムで起きた、

米ソ対立の代理戦争と同じだ。

 

私は友人の発言を

そう解釈しました。

  

かつてのベトナムを

ウクライナに重ね合わせているのは、

彼だけではないはずです。

 

 

戦争と平和

私は大多数の人と同様に、

平和な世界を望んでいます。

 

ただ、

これまで世界で起きた多くの戦争は

建て前か本音かはともかく、

「自国の平和維持」が

引き金となっています。

今回の、ロシアのように。

 

そして他国の覇権争いに

巻き込まれた人々も、

自国の平和を取り戻すため

戦いを強いられています。

ウクライナのように。

 

ただ平和を望むだけでは、

戦争を無くすことはできない。

 

人ごとではない今回の戦争が、

それを世界中に

知らしめているように感じます。 

 

 

私にとって最も大切な

日本という国は

一部の他国とは異なり、

国のあり方を国民が決めます。

 

ベトナムから見える

アジアの現状に

目を凝らしながら、

日本の主権者としての役割を

果たさなねばなりません。 

 

Photo by Claudio Schwarz

 

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